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2025.07.02
【コラム】ついに10億円超えの物件も!拡大するフィリピンの高級コンド市場

POGO禁止で勢いを欠く低中価格帯のコンドミニアム市場
この1~2年間におけるフィリピンの低中価格帯コンドミニアム市場(3,000万円未満程度)は、売買・賃貸ともに現地の動きが鈍くなっています。その最大の要因は、2024年にフェルディナンド・マルコス大統領が、「POGO(フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター)」と呼ばれるオンラインカジノの全面禁止令を出したことにあると言えるでしょう。
POGOは中国人による中国人向けのオンラインカジノといった色彩が強く、親中派だったロドリゴ・ドゥテルテ前政権時代に隆盛を極めました。当時から犯罪リスクや安全保障上のリスクなどを懸念する声は上がっていましたが、経済的なメリットの方が大きいとして目をつぶってきました。
ただ、2022年に親米派のマルコス政権が発足すると状況は一変。無認可での違法操業にとどまらず、特殊詐欺や人身売買などの悪質な犯罪の温床にもなっているとして、就任直後からPOGOに対して厳しい目を向けてきました。
この禁止令によって、中国人を中心に関連していた外国人2万人以上が国外退去になったとも言われる中、POGOの集積地だったマニラ湾岸エリア(パサイ市、パラニャーケ市)では、受け皿となっていた低中価格帯のコンドミニアムやオフィスの賃貸需要が激減。その余波は、マカティ市などの近隣都市にも少なからず及んでいます。
世界的な不動産サービス会社コリアーズ・インターナショナルは、販売価格700万ペソ~1,200万ペソ(約1,780万円~3,060万円)の中価格帯コンドミニアムの動きが特に鈍いと指摘。2019年に10.5%程度だったマニラ首都圏の住宅空室率は、2025年末には過去最高水準の25.8%に達すると予測しています。
POGOの受け皿となってきた大衆向けの低中価格帯コンドミニアム市場では、しばらく需給バランスが悪化した状況が続くことは避けられず、次のジャンプに向けた充電期間となりそうです。
対照的に堅調を維持する高級コンドミニアム市場
ここまでの話だけを聞くと、足元のフィリピン不動産市場に対してネガティブな印象しか受けないと思いますが、高級コンドミニアム市場に目を向けると全く異なる景色が見えてきます。
米大手調査会社S&Pグローバル・レーティングスによると、2024年にマニラ首都圏で新規供給された住宅のうち、販売価格1,200万ペソ以上の高級物件が全体の41%を占めたにもかかわらず、住宅在庫に占める高級物件の割合は約5%と低位で推移。
また、英大手不動産コンサルティング会社ナイトフランクが発表している高級住宅価格指数「プライム・インターナショナル・レジデンシャル・インデックス(PIRI)」で、2024年にマニラ首都圏は前年比26.3%上昇し、対象の主要100都市の中で最大の伸び率を記録しています。
実際、高級物件開発に特化した大手財閥系デベロッパーであるロックウェル・ランドのバレリー・ソリベン社長兼CEOが、「中価格帯のコンドミニアムでは供給過剰が起きているが、高価格帯を中心とする我々には影響がない」と語っているように、現場を知る大手デベロッパー各社の幹部たちからは、高級コンドミニアム市場に対する明るい見方が示されています。
なぜ高級コンドミニアム市場は堅調なのか?
富裕層の増加
まず、シンプルにフィリピンの富裕層が増加していることが挙げられます。英コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズによると、100万ドル(約1億4,300万円)以上の資産を持つフィリピンの富裕層は、2014年~2024年の間に32%増加して1万2,800人に拡大。このうち、1億ドル以上を保有する超富裕層は70人、10億ドル以上を保有するビリオネアも12人に上っています。
インフレヘッジ需要
フィリピンでもここ数年、高水準のインフレが庶民の生活を襲い、こうした層の購買力は低下してきました。ただ、富裕層にとってはこの程度のインフレはかすり傷にもならず、むしろインフレヘッジ効果の高い実物資産を購入するインセンティブが働きやすくなります。
その中でも、特に富裕層が好むのは高級不動産です。高級な物件ほど買い手も借り手も高インフレによる購買力の低下や金利の上昇といった悪影響を受けにくい層となり、より高いインフレヘッジ効果が見込めるため人気があります。
抑制された新規供給
大衆向けの物件と比べて高級物件は新規供給が限られていることも、需給が緩みにくい一因と言えるでしょう。高級物件を開発するためには多額の資金が必要になるため、手掛けられるのは一部のデベロッパーに限られますし、富裕層を惹きつけることができるロケーションの土地が出てくる機会もそう多くありません。
実際、先月末に大手不動産開発会社メガワールドは、新たに超高級住宅ブランド「メガワールド・シグネチャー・コレクション」を立ち上げる方針を発表しましたが、厳選した土地で年に1~2案件のみを提供する形になるとしています。
一戸建てからの住み替え需要
フィリピンの古くからの富裕層は、セキュリティ性の高いゲート付きの高級住宅街にある一戸建て住宅に好んで住む傾向がありました。ただ、近年は子供が独立して家を出たことで豪邸を持て余している高齢の富裕層を中心に、実用性を重視してコンドミニアムに転居するケースが増えてきています。
こうした高級住宅街はやや郊外にあるケースが多いですが、厳しい渋滞によって中心部へのアクセス性が悪くなっていることも、コンドミニアムへの転居を促す一因となっているようです。
開発会社も当面は高級物件開発にシフト
こうした市場環境を受けて、アヤラ・ランド、メガワールド、ロビンソンズ・ランド、SMプライムホールディングスの大手デベロッパー4社は、少なくとも今後2年間は大衆向けの住宅供給を絞り、高級物件に軸足を移していく姿勢をすでに示しています。
この4社でフィリピンの不動産会社の設備投資額の7割超を占めるため、これが今後数年間のフィリピン不動産市場のトレンドと考えていいでしょう。
大手デベロッパーの場合、在庫を抱える財務的な余力があるうえに、高級物件開発のための資金調達力もあるので、時間をかけて利幅の大きい高級物件を販売しながら、積み上がった在庫を捌いていくことができます。ただ、それらを持ち合わせていない中小デベロッパーにとっては現在の市場環境は非常に厳しく、竣工リスクに注意を払う必要性は高まっていると言えます。
フィリピンでも億ションはもはや珍しくない時代に
弊社がフィリピンの不動産を扱い始めた10年以上前は、3ベッドルームで2,000万円~3,000万円の物件でもかなり高額な部類で、とある高級ホテルブランドのレジデンスが7,000万円~8,000万円で発売された時には、目が飛び出そうになったのを覚えています。
ただ、そこから時が過ぎ、現在のフィリピンの不動産市場を見てみると、高級コンドミニアムの3ベッドルームはもはや1億円超えが当たり前に。さらに、現在は数億円あるいは10億円を超えるような超高級コンドミニアムのプロジェクトも進んできています。
当然ながら、現在はこうした超高級コンドミニアムに対して高すぎるという印象しか持てないと思いますが、ひょっとすると10年後にまた振り返った時に「あの時は安かったね」となるのかもしれません。
最後に、参考までに現在開発が進んでいる数億円~10億円超の超高級コンドミニアムをいくつかご紹介して終わりたいと思います。
パーク・ヴィラ
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「Park Villas(パーク・ヴィラ)」は、フィリピンの不動産開発最大手アヤラ・ランドの最上級ブランド「アヤラ・ランド・プレミアム」が経済中心地マカティ市で開発する、2030年完成予定、51階建て、全45戸の超高級コンドミニアムです。1戸当たりの面積が610㎡と広大ではあるものの、価格はなんと5億ペソ(約12億7,500万円)以上となります。
ロケーションは、マカティ市の中心である「アヤラ・トライアングル・ガーデン」と向かい合う超一等地。設計はブルジュ・ハリファなどを手掛けた米最大級の建築設計事務所「スキッドモア・オーウィングズ&メリル」、インテリアは世界的なデザインスタジオ「ヤブ・プシェルバーグ」が担当する、富裕層好みのプレミアムな物件です。
バンヤンツリー・レジデンス・マニラベイ
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物件名の通り、開発を主導するのはアジアを代表する高級ホテル運営会社「バンヤンツリー・グループ」。マニラ湾岸エリアにある統合型カジノリゾート(IR)の中でも特に人気の高い、「オカダ・マニラ」の道向かいという特別感のあるロケーションを誇ります。
エルリア
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「Eluria(エルリア)」は、マカティ市の高級住宅地であるレガスピ・ビレッジに2025年末に完成を予定している、31階建て、全37戸の超高級コンドミニアムです。3ベッドルーム(288㎡)で約3億2,500万円以上となりますが、こちらの物件は良好なコミュニティを形成できる購入者を厳選しながら選んでいるため、お金があれば誰でも購入できるわけではないようです。
開発を行うのは、高級物件開発に強みを持ち、三菱地所とも提携している「アーサ・ランド」。最大の特徴は、世界的なバトラー養成機関である「インターナショナル・バトラー・アカデミー(TIBA)」でトレーニングを受けた、一流のバトラーによるサービスが提供される点です。
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投稿更新日:2025年07月02日















